2008年11月18日

転職は慎重に・・・・(人材会社の功罪)

 

Book-No.80
「転職は1億円損をする」

石渡 嶺司 著
角川oneテーマ21

 

業界ネタっぽいですが・・・
転職とそれを取り巻く人材業界について書かれた本です。

そりゃ、何年も、何十年も一つの会社で働いていれば、
誰だって一度や二度は会社を辞めて転職をしたいと思うでしょう(多分・・・)
特に隣の芝生は青く見えますからねぇ・・・

終身雇用が当たり前だった時代であれば、
転職は何だか後ろめたい行為というふうに社会から見られていたそうですが、
今では転職は当たり前・・・くらいになっていますよね。

そして転職者が増えれば、そのための人材ビジネス、転職支援ビジネスも
どんどんと成長していく・・・と言う訳です。

■人材ビジネス・転職支援ビジネスの功罪

転職支援会社は「転職が多いほど儲かる」ということになる。単純に言えば、
こういう会社にとっては「みんなが転職を繰り返す」状態が一番ビジネスに
なる
」(P98)

当たり前の話ですが、転職支援会社も「人助け」ではなく、「ビジネス」を
やっているので、売上なり利益が上がらないと困るわけです。
そして、問題になるのは転職ビジネスは「人」を扱っている点です

例えば、私が長年働いている小売業界であれば、
商品を調達してきて、店に並べて売ることで売上や利益を確保しています。
しかし、転職ビジネスの場合は問屋さんや商社から「人」を仕入れる事は出来ない。
もちろん、工場で「人」を生産する事も出来ません。

では、どうするか?

転職ビジネス会社は転職をあおる。大規模な転職イベントを何度となく開催し、
有名人を使った派手な広告を打ち、大学生の就職情報サイトさえも利用する

(P125)

そう。
転職して、キャリアアップして、年収もアップ!みたいな美辞麗句を並び立てて
転職を煽るのです。
今の職場で自分は正当に評価されていない」とか、
きっと、自分にはもっと能力を活かせる会社があるはず」などと
思っている人は、それこそ沢山いますから、
そうした転職予備軍を煽って、転職活動に向かわせるというわけです。

また、本書の中では大学生が利用する就職情報サイトに
登録された個人リストを転職サイトへの誘導に転用したりしている例が、
実際の社名入りで暴露(?)されています。

■転職は損か得か?

どれだけ転職を煽っても最終的に、企業も転職者もハッピーになれば
何も問題はないと思うのですが、そうは桑名の焼きハマグリ。

一般論として終身雇用者と転職経験者の生涯賃金を比べると、
基本的には終身雇用者のほうが生涯賃金は高いという調査結果があります。

本書の中でも(極端な例ではあるのですが)、終身雇用者と転職経験者の
生涯賃金を試算すると、1億円の差が生じる、だから転職は金銭的には
損をする、という事を訴えかけています。

採用の現場にいる私から見ても、転職で年収がアップするというのは
本当に一握りの人だけだと思っています。

キャリアも立派で、実績もあって、「絶対に採用したい!」という人には
社内の給与規定ギリギリまで、高い給与額を提示しますが、
大部分の人に対しては、別に足元を見る訳ではないのですが、
前職で得ていた給与額よりも、低い額での提示になってしまうのです。

結論めいた書き方になってしまいますが、
ごく一部の人を除いて、転職は金銭的には「損」と考えてよいと思います

もっとも、転職に求めるものは何も金銭だけではないのも、
事実ではあるのですが・・・

■転職ビジネス会社にあおられる若者・・・?

つまり、「転職は損」という事実を伝えるよりは「転職は得」という幻想を主張し、
かつ若手社会人を早期転職に追い込む方がはるかに儲かるのである
」(P127)

しかし、逆の見方をすれば転職ビジネス会社が煽るのに、のかって
転職を志望する人がいるから、会社側も煽るのだという見方も出来ます。

こうなってくると、もはやニワトリと玉子ではないが、
転職を煽る「転職ビジネス会社」が悪いのか?
安易にそれにのってしまう「若手社会人」が悪いのか?

ここからは純粋に私の意見を書きたいと思います。

私としては「転職ビジネス会社」も「若手社会人」も、
どっちも、どっちだと思っています。
しかし、もっと罪が大きいのは新卒採用で若者を受け入れた企業側だと思っています。

3年3割」という言葉は、どこかで耳にしたことはありますか?
大卒で入社した若者が3年以内に3割も退職をしているという事なのです。

高校や大学の中退率に置き換えてください。5パーセントを超えれば、
教育困難校とされ、10パーセントを超えれば、教育内容がよほどひどいか
荒廃しきっており、受験生集めは困難となるでしょう
」(P158)

確かに企業を学校に置き換え、退職を中退に置き換えてみると
事の異常さが目に見えてきますよね。

辞めていく当人たちにも問題はあると思いますが、
企業側にも、採用の時や入社後の教育などに相当問題があるのではないかと
私は思っています。

この辺、本当はもっと詳しく書きたいのですが、長くなるので割愛します(汗)
■転職は慎重に・・・

私は転職を全否定するものではない。前向きな転職ならそれもいいだろう。
私が問題と思うのはわずか数年、数ヶ月の社会人経験によって踏み切る早期転職である。
早期転職がいかに損をするか!
若手社会人ならびに若手社会人を取り巻く人々に、再考していただければ幸いである

(P191)

全く同感!
ただ、本書の趣旨とは少し離れるが、読んでいて一つ思ったことがあります。

上の方でも書きましたが、転職して収入が増えるのは結構恵まれたケースだと思うんです。
ましや、今のように不景気風が吹きまくっている中では正社員として再就職できるだけでも
ありがたい、みたいなところも実際あると思います。

でも、私個人の考えですが・・・
本当はもっと人材の流動化が進んだ方が、個人にとっても日本の社会にとっても
きっと良いんですよね。

怖くて転職に踏み切れず、一つの会社に「しがみつく」ような状態が健全だとは
私には思えません。

上の方で「人材ビジネス・転職支援ビジネスの功罪」と書きながら、「罪」の部分しか
書いていませんが、人材ビジネス会社の功績というものにももっと注目して良いのでは
ないかと・・・

確かに必要以上に「転職を煽る」のは良くない事だと思います。
でも、転職者の全てが軽はずみで転職をしている訳でもないのです。

本当にステップアップしたいと思って、「次のステージ」を探している人もいますし、
中にはどうしようもないダメ会社から脱出したいと思って転職活動をしている人だって
いるわけです。
そうした人たちに対して、きちんと企業と求人者のマッチングが出来るようになってくると
きっと今以上に、人材ビジネス会社の存在意義も大きくなってくると私は思います。

・・・というわけで、本当に業界ネタみたいな話に最後までお付き合いくださり、
ありがとうございました。

タグ:転職
posted by penguin-oyaji at 21:18 | Comment(4) | TrackBack(1) | 読書(ロスジェネ・雇用問題) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月05日

明日は今日よりもよくなるか・・・・?

 

Book-No.35
「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか」
−アウトサイダーの時代

城 繁幸 著
ちくま新書

ディスカヴァー・トゥエンティワンの干場社長のブログ
触発されてしまい、今日は現在の若者の就職観、
仕事観などについて私なりに考えてみたいと思います。

この手の問題を考えるときに、参考になるのが
城繁幸さんが書かれた、この本。
本書は前作の「若者はなぜ3年で辞めるのか?」の
続編的な形になっていて、平成的価値観に従って働く
22人を追ったルポルタージュのような構成になっています。

■なぜ、また安定志向・・・?
学生の意識調査などを見れば、彼らが企業に求めるものに
「安定性、終身雇用」といったキーワードが際立て目に付く。
求人倍率についても、従業員数1000人以上の大企業に
集中する形で底上げされているのが現実で、一言でいうなら
昭和的価値観のゆり戻しが起きているのだ
」(P235)
09年の就職戦線(※)もほぼ終了した観がありますが、
(私の会社は全然、採用できていないので、このまま秋採用に
突入です)
今年の学生の意識調査では、本書にもあるように
・安定志向
・大企業志向
がまた、復活してきています。
ちょっと前に人材会社の営業の方からこの調査結果の話を
聞いたときに、妙な違和感を覚えました。

(※、今は08年じゃん!と思われるかも知れませんが採用の業界では
入社年基準ですので、09年就職戦線とは、来年の春入社の新人採用
の事を指すのです)

このブログでも何度か、ロスジェネ世代の事について書いてきました。
本や雑誌で得た情報と私が採用の仕事の中で出会った人たちの
印象などから、ロスジェネ世代の特質として
・従来の日本型雇用(年功序列、終身雇用)を信用せず、
・会社に縛られない
・自立した生き方を求める人が
・それ以前の世代よりも多くいる
というふうに考えています。

・・・と、思っていたのにココに来てまた、従来のような
大企業に就職して、安定した生活を得て、定年まで働きたい」と
考えている学生が増えてきていることに、どうも納得がいかないのです。

干場社長もブログで同じようなことを書かれていますが・・・
年功序列、終身雇用制度が成り立っていた背景は間違いなく
大きな経済成長と人口の増加だと思います。
しかし、低成長時代に入り、少子化が進む現在で今後、
年功序列、終身雇用制度が機能しなくなる・・・
と言うよりは一部の人たちにしかメリットの無い制度になるのは
自明の理ではないでしょうか。

それに、会社が自分の事を定年まで守ってくれる・・・というのも
既に幻想、過去の遺物になっているのは言うまでも無いですよね。

それなのに何故また、安定志向?
それなのに何故また、大企業志向?

格差社会の中で「負け組み」に入りたくないという思いなのでしょうか?

■若者だって色々と考えている・・・・
昨日のブログでも少し書きましたが、ココ最近、たて続けに入社一年目の
営業マンが商談に来ました。
その中の、ある女性営業ウーマンの話。

彼女は今年の春、地方の某国立大学を卒業し、今は人材会社の
営業の仕事をしています。

商談が終わった後、例によって私は色々と質問を始めました。
(この世代の就職観とか仕事観に興味があり、ついつい仕事と関係ないのに
色々と質問攻めにしてしまうのです)

彼女の夢(予定)は30歳までに独立する。
独立して何をしたいかというと・・・セカンドビジネスとしてカフェをやりたい。
でも、カフェはあくまでもセカンドビジネスとしての位置づけなので、
本業としての仕事は、今の仕事を通して探していきたいし、そのための
人脈づくりとか人間関係も作っていきたいと
目をキラキラさせながら話してくれました。

自分の新人の頃とはスゴイ違いだ!と思いつつ、
平成的価値観にしたがって、しっかりと前を見て生きていることに
私は大きく頷いたのでした。

もう一人の新人営業マンは、地方の公立大学を卒業して上京し
やはり人材会社の営業をしている男性の方。

この彼が昨日のブログで登場してもらった、私が和田さんの本を
逆営業してしまった営業マンです。

彼とは和田さんの本の話をきっかけに、ビジネス書の話や、
現在の勉強本ブームの背景とか色々な話をしました。
その時、彼がこんな事を話してくれたのです。

本当は僕もそうした勉強の話とか、生き方の話しとかを自分の
上司にもしてもらいたいんです。でも、飲みに行っても上司は
数字の話しかしないし・・・・

■教えてもらいたがっている若者と、何も示さない大人
彼のその言葉を聞いた時に思いました。
教えてもらいたがっている・・・

社会人っていうのは、先輩の仕事ぶりを見て盗むんだ!とは
私が会社に入った頃に上司から言われた言葉です。

でも、いまどきの若者にその話は通用しません。
手取り足取り、教えてもらうのが当たり前と思っている子が
多いですからね。

少し前ならどの会社にもいた目標になる上司がいなくなり、
だからビジネス書やセミナーが必要になったのでしょう

(アエラ08年6月9日号、「ロスジェネ一発転進」より抜粋)
この考え方を日本社会全体に拡げて考えてみると・・・

昭和的価値観(年功序列、終身雇用の安定した、将来を
約束された働き方)が崩壊し、格差社会、ワーキングプアなどの
問題も発生しました。そしてマスコミなどでは、それらの問題を
これでもか!」と煽り立ててきました。
でも、次にどんな働き方、どんな価値観を持って生きればよいのか、
を教え示している人が、あまりにもいないのではないか。
会社にも、日本社会の中にも・・・

そんな環境の中で、教えて貰いたがっている若者は
不安感だけがつのり、
取りあえずの安心材料を得るために
「大企業志向、安定志向」に走るのではないかと・・・・

■大人の役割
現在のような状況の中で私ら大人が果たしていかなければ
ならない役割とは何か・・・を自分なりにまとめて書いてみます。
(理念)
先ず絶対に必要なのは、大人が次世代に語れる
ビジョンを持つことだと思います。

(報酬制度)
それから、年功序列・終身雇用制度に代わる新しい日本的な
システムを提示し、構築すること。
筆者の城氏が言うように年功序列型の職能給制度から
職務給制度への移行のように・・・

(教育)
教えて貰いたがっている若者に対しては、企業理念から
始まって、実務までをきちんと教育する。

(新人にも役割を与える)
「俺が若い頃は、毎日毎日コツコツと下積みをしたもんだ」と
いう話は、終身雇用制が機能していた頃のお話ですから、
今時、説得力はありません。
新人にも責任ある仕事を任せ、将来のキャリアパスが
描けるように育てることが必要だと思います。

背中を見て覚えろ!は今の若者には通用しないと、先ほど
書きましたが、
でもやはり、若者の目標となる、手本となる人生の先輩に
なることが必要なのではないかと思います。
人は人から学ぶのですから・・・

さて、ここまで書いて何ですが・・・

自分の思いばかり書いていて、本の感想とかは
殆ど書いていませんね・・・

本書に学ぶ点、共感する点は多いのですが、
それはまた、別の機会に書かせてください。

それでは、今日も読んでいただき、
ありがとうございました。

posted by penguin-oyaji at 22:13 | Comment(4) | TrackBack(0) | 読書(ロスジェネ・雇用問題) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする