2008年06月01日

内部統制としての会計原則「稲盛和夫の実学」

Book-No.26


「稲盛和夫の実学」


経営と会計


稲盛和夫 著


日経ビジネス文庫


(ISBN:978-4-532-19006-4)

著者は多くの方がご存知だと思いますが、


京セラの名誉会長、稲盛和夫氏です。

今まで何冊か、会計関連の本を読んできましたが、


大企業の経営者は会計をどのように捉えているのだろうか、


と云う単純な疑問から本書を手に取りました。

普通に読めば、紛れもなく「会計と経営」について


書かれた本です。


しかし、今、流行の(?)内部統制という切り口で読んでも


充分に参考になる一冊だと思います。

「一対一対応の原則」


経営活動においては、必ずモノとお金が動く。そのときには、


モノまたはお金と伝票が、必ず一対一の対応を保たなければ


ならない」(P65)


伝票だけが先に発行されて、商品は後で送られてくる。あるいは


その逆のパターンも往々にして現場では起こっているのでは


ないでしょうか。


そうした事に対して稲盛氏は厳しく苦言を呈します。


このような「伝票操作」ないし「簿外処理」が少しでも許されると


いうことは、数字が便方によっていくらでも変えられるということを


意味しており、極端に言えば企業の決算などは信用するに値しない


ということになる」(P66)

以前、バイヤーをしていた頃に夕方頃、商品が間に合わなくなり


慌てて仕入先に電話を掛けて発注をしようとした事がありました。


その時、先方の受注担当者からは


「コンピュータの締切時間が過ぎてしまったので、伝票が発行できず


商品も出荷できません」と言われ


「仮伝でも手書き伝票でもいいから、今すぐ出荷してください!」


出来ないものは、出来ません!


散々押し問答をしましたが、結局は翌日のアサイチ出荷と


なってしまいました。

今になって思えば、あの仕入先は「出荷伝票」と「商品」は一緒に


動かす、というまさに「一対一対応」を頑なに守っていたんだなぁ、と


思います。


もっとも、その対応が良いのかどうかはいまだに疑問ですが・・・

ただ、「一対一対応」が徹底されていれば、不正に商品を横流ししたり、


架空の伝票を計上したりするような事は、かなり難しくなるのは


確かだと思います。

「ダブルチェックの原則」


人の心は大変大きな力を持っているが、ふとしたはずみで過ちを


犯してしまうというような弱い面も持っている。人の心をベースに


して経営をしていくなら、この人の心が持つ弱さから社員を守る


という思いも必要である。これがダブルチェックを始めた動機である


(P104)


よく会社のお金を使い込んでしまって最後には「業務上横領」で


つかまってしまう事件が発生しますよね。


あれは、まさしくこのダブルチェック機能が働いていなかった


証拠だと思います。

私の会社は小売業ですので、お店の金庫には釣銭やら売上金やらで


それ相応のお金がいつも入っています。


で、以前は金庫からこのお金が無くなると云う不正が何年かに一度は


発生していました。大抵の場合、犯人は店長


チェックが甘いと、権力を持っている人の不正が発生しやすいという


典型的な事例です。


店長と言う立場を利用して、金庫からお金を持ち出すと言うのは


確かに悪いことですが、それが出来てしまう環境を放置していた


会社側にも相当の責任があると思います。


よしんば出来心が起こったにしても、それができないような仕組みに


なっていれば、一人の人間を罪に追い込まなくてすむ。そのような


保護システムは厳しければ厳しいほど、実は人間に対し親切な


システムなのである」(P105)


私もまったく同感です。

いつしか当社では「店長は金庫のお金を触ってはいけない!」と云う


(極端な)ルールが決まり、金庫管理は事務担当及び副店長が


責任を持って行うようになりました。


確かにその後、金庫からお金がなくなる不正は発生しなくなりましたが・・・


このルール、笑うに笑えない欠点があるのです。


金庫のダイヤルナンバーは定期的に変更されるのですが、


店長には知らされません。だから、本当に店長は金庫を開ける事が


できないような仕組みなのです。


もしもある時、事務所に強盗が押し入り店長に向かって


「金を出せ!」と迫った時、


「私は金庫を開ける事が出来ないのです!とこたえたら、


果たしてその強盗は店長の言うことを信用するでしょうか?

本書の中ではこの他にもガラス張りの経営などのキーワードが


出てきます。


このように不正をさせない仕組みや、


不正を許さない社内の雰囲気が徹底されている事


これこそがJ−SOXで求められている統制環境だと思います。


適用初年度と言うことでJ−SOX(内部統制)について話題になったり


各社ともその対応に追われているようです。


本書が書かれたのが今から十年前の1998年。


京セラでは既にその頃から内部統制が徹底されていたのですね。


【▼文庫】


【▼kindle版】



posted by penguin-oyaji at 22:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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