2008年04月27日

会計操作と企業の社会責任

Book-No.20

「決算書の暗号を解け!」

(ダメ株を見破る投資のルール)

勝間和代 著

(ISBN:978-4-270-00262-9)


このブログで何度か勝間氏のお名前は書かせて頂いて

おりましたが、著書を取り上げるのは初めてになりますね。


以前に「財務3表のつながり・・・・」で

私は数字が嫌いだ!と叫びましたが、

今回の本も読んでいて、頭から煙が出てくるかと

思いました(笑)


本書はサブタイトルに「ダメ株を見破る投資のルール」

とあるように、基本的なスタンスは株式投資をしている

人向けにどのようにして、企業の財務報告書(決算短信や

有価証券報告書など)を読み解き、その会社の実態を

分析、把握するか、と云う点に重点が置かれた内容に

なっているように感じました。


《Penguin's EYE》

証券市場では、利益の金額には注目が集まっても、

その金額をどうやってつくりあげたのかという点については、

ほとんど議論されません。」(P 5)

企業の利益には「金額」の違いだけでなく、「質」の

違いがある」(P 5)

利益の質の違いとは何か・・・?

通常は利益(営業利益または経常利益)がどれくらい

伸びたのかは、「損益計算書(PL)」を見て判断すると

思います。

利益が前期と比較して増えていれば、ウハウハな訳ですが、

本書では会計操作、それも合法の範囲内で利益を増やす事が

出来る点を指摘。どのような会計操作で利益をコントロール

できるのかという点が細かく解説されています。


例えば私は長年、小売業の現場にいた訳ですが、

「在庫を増やせば、利益が出る」と云う事は肌で知っていました。

売上−売上原価=売上総利益

PLの一番上の方に出てくる利益ですが、この公式を見れば、

売上が一定でも、売上原価を小さくすれば売上総利益が

増えるのは小学生でも分かります。

真っ当に考えれば、仕入れ先と原価交渉をして、仕入れ値を

安く抑えると云うのが「正解」だと思います。


し・か・し、このご時世、そう簡単に仕入れ値は下げて貰えません。

では、どうするか・・・?


例えば・・・

期間売上高:90万円

期首在庫高:10万円

期中仕入れ高:90万円

期末在庫高:10万円

と云う条件を設定して計算すると、

売上原価=期首在庫高+期中仕入れ高−期末在庫高

で計算されますので、

売上高(90万円)−売上原価(90万円)=売上総利益(10万円)

と云う事になります。

この場合、期末在庫高が10万円ではなく、15万円だったら、

売上原価は85万円、売上総利益は15万円と利益が増える事に

なりますね。


では、期末在庫高を増やすためには何をするか?

期末棚卸しで架空の在庫を計上してしまうやり方がありますが、

これはさすがに御法度です!

しかし、売価還元法であれば期末に在る在庫の値段を

値上げしてしまえば、期末在庫高が増え、それにより原価率も

下がりますので、売上総利益を増やす事が出来てしまいます。


また、小売業の場合は単品で商売をしている訳ではありませんので、

単品の原価は変わらなくても、相対的に粗利率の高い商品の仕入を

増やせば、期末在庫が増えても売上原価はマイナスになり、

結果的に売上総利益が増えるのです。


しかし、そうやって在庫を操作して利益を増やしても、

貸借対照表を見れば、

・流動資産の棚卸資産が増える

・仕入を増やしていれば、買掛金が増える

という点からすぐに、おかしい事は分かってしまいます。

キャッシュフロー計算書を見ても、利益は増えているのに、

営業キャッシュフローは増えていない訳ですから、

不自然に見えます。


また、値上げをしたり、販売の実力以上に在庫があると云う事は

在庫の内容が悪い訳ですから、翌期以降は値下げしたりして

販売しなくては”売れない”ので、利益が減ってしまう事は容易に

想像できると思います。


人為的に利益を調整すれば、それが合法であろうと非合法で

あろうと必ずどこかに歪みが生じます」(P54)

本書ではこのように、企業が利益を増やすために、

”正当でないやり方”をすると、財務3表のどこに現れるのか、

それをどうやって見破るか、という事が実例を挙げながら詳細に

解説されています。


《impression》

本書の内容としては財務諸表の分析が主ですが、

実例とともに解説されていて分かりやすいものでした。


勝間氏が本書を書かれた理由、というか著者としての”思い”が

あとがきのところに書かれています。

企業の「成長」ばかりに目が向けられていたこれまでの考え方

から、内部統制やCSRのバランスを重視した考え方へと私たち

投資家の意識が変わることで、結果的に社会全体の誠実さが

保たれるのです。あなたが何かに投資しようとするとき、その

判断がめぐりめぐってこの社会に深く広く影響を及ぼしている

ことを、ぜひ思い出してください」(P221)


SRI(社会的責任投資)の事にも少し触れられているのですが、

企業のガバナンスを考える際にも重要なキーワードかなと

感じました。


私も今、内部統制の仕事をしている中で

「何で、こんな面倒な事をしなきゃいけないんだ?!」と

思う場面も正直多いのです。

でも企業の存在意義は社会に役に立つ事、と云う大前提に立って

考えると、内部統制も単に”投資家保護”という観点だけでなく、

企業の社会的責任につながっているものだと云う事が分かります。


posted by penguin-oyaji at 15:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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