2019年06月24日

【歴史】「経済で読み解く日本史(5)大正・昭和時代」上念司:著

大正 昭和

「経済で読み解く日本史(5)大正・昭和時代」
上念司:著
飛鳥新社

「経済で読み解く日本史」もこの本が最終巻です。

 

ここではかなりのページ数を割いて、日本や世界がなぜ第二次世界大戦に突き進んでしまったのかを当時の経済背景を中心に解説されています。

 

歴史に「もしも」はありませんが、この本を読みながら「あの時、もしも」と何度も思わされました。

 

もしも、ケインズ先生の言うことを聞いていたら、ドイツはどうなったろうか?果たしてナチス政権は誕生したのか?

 

もしも、石橋湛山の言うことを聞いていたら、昭和恐慌は起きただろうか?そして、その後の日本の道はもう少し違ったモノだったのではないだろうか?

 

時に政治は間違えを犯すし、人々も誤った考え方に熱狂してしまいます。

 

しかし、一方でいつの時代にも正しい主張をする人もいるのです。

 

この本を通じて「歴史(を)学ぶ」のでなく「歴史(に)学ぶ」ことが私たちの未来にとって、とても大切であることを教えられました。

 

 

アマゾンの内容紹介

なぜ日本は大東亜戦争へと向かったのか。国民世論は長期停滞のトラウマから抜け出せないまま、間違った情報により、日米激突へのレールをまっしぐらに進んだ。すべてを失った敗戦から復活し、高度経済成長を成し遂げた日本を、再びバブル経済の暗雲が襲う。

 

デフレの要因

この「経済で読み解く日本史」を1巻から順に読んでいると、至る所にデフレの文字が出てきます。

 

デフレの原因は時代によってさまざまです。

 

室町・戦国時代→明との貿易が滞った結果、明銭(銅銭)の通貨不足によりデフレが発生

 

江戸時代→金山を掘り尽くして金が枯渇して通貨不足、加えて質素倹約令などの緊縮政策によるデフレが発生

 

そして、明治以降は当時の金本位制により通貨の発行高が限定され通貨不足によるデフレが発生

 

金本位制の何が問題なのかは、次の文章をお読みいただければ分かるかと・・・

金本位制とは、「各国通貨は必ず金(ゴールド)と交換できることが保証されているという仕組み」です。

(中略)

このシステムの最大の問題点は、金が金属であり、新たに金山が開発されない限りその量が増えないということです。

これに対して、人類の文明の発達速度は早く、より多くの富を幾何級数的に生み出していきます。

金(ゴールド)の産出量がこれに追いつかないと、人間が作る商品よりも金(ゴールド)の量が不足し、金(ゴールド)の価値のほうが高くなってしまいます。これこそがデフレです。デフレとはモノとお金のバランスがお金不足によって崩れることです。

 

「明銭(銅銭)の不足」「金山の枯渇」「金本位制」これらのデフレ要因はその当時の経済体制に問題があった・・・と解釈できますね。

 

しかし、デフレの原因はそれだけではありません。

 

間違った経済対策をおこなった結果、デフレが発生することもあります。

 

例えば、この本に出てくる井上準之助蔵相などがそうです。

 

1930年(昭和5年)に反対意見を押し切って金本位制に復帰した結果、大失敗して昭和恐慌の引き金を引いてしまいました。

 

もはや昭和恐慌は人災だったと言っても差し支えないような気がします。

 

「人災によるデフレ」最近もありましたよね。

 

2008年9月に発生したリーマンショック。この時、アメリカや欧州の中央銀行は協調して金融緩和措置をとりました。

 

しかし、日銀はこれに加わらず静観した結果、とんでもない円高になりました。

 

そのあと、派遣切りや年越し派遣村なんて騒動につながりましたよね。

 

まぁ、「あの恐慌は彼の経済政策が間違っていたからだ!」と後出しじゃんけん的に言うことは誰でもできます。

 

ただ、次の文章を読むと井上準之助蔵相に関してはとても罪深い!と思わされました。

内閣総理大臣の濱口雄幸と大蔵大臣の井上準之助は、「精算主義的な思想」にとり憑かれていたようです。

この思想は、「明日伸びんがために、今日縮むのであります」という言葉に代表されるように、「弱い企業をどんどん倒産させ、生き残った企業が日本経済を引っ張っていけばいい」という発想に基づいています。

 

そういえば「米百俵」がどうのこうのと国会で演説した総理大臣がいましたね。

この本の中で著者は「痛みに耐えるとバラ色の未来がやってくる」という人たちに対して「どの程度の痛みに何年耐えると、その何倍のメリットがあるのか」という指摘に答えられない、と批判します。

 

個人レベルで「痛みに耐えて・・・」というのは勝手ですが、国の政策としてこの手の言葉を発する以上は、具体的な数字を出さなければそれは単なる「精神論」ということですね。

 

デフレの何がいけないのか?

「デフレになるとモノが安く買えるようになるので助かるわ〜」

 

さすがに、最近はあまり耳にしなくなりましたが、ちょっと前まで日本でもこんなことを言う人がいましたよね。

 

しかし、この本を読めば分かりますが、いつの時代でも、どこの国でもデフレは「悪」です。

 

良いデフレなんてない!あるのは「悪」の一言だと思います。

 

そして、この「経済で読み解く日本史」の一貫したテーゼとして著者は言います。

「人々は経済的に困窮すると、ヤケを起こして、普段は見向きもされない過激思想に救済を求める」

「愚かな決断、判断の誤りは気の迷いから生じ、気の迷いは経済的な困窮に誘発される」

 

このことを端的に表しているのがヒットラーの台頭ではないでしょうか?

 

第一次大戦の敗戦によってドイツはボロボロになりました。

 

植民地は全部取り上げられ、領土は割譲された上に多額の賠償金を要求されたのです。

 

その結果、ハイパーインフレが起こりました。そして時を置いてドイツはデフレに陥ります(詳しい経緯は本書にてご確認ください)。

 

経済的にボロボロになったドイツ国民が支持をしたのが、ヒットラーでした。その後、どういうことが起こったかはご存知の通りです。

 

まさに経済的に困窮して過激思想に飛びついてしまった結果の悲劇ですね。。

 

経済失政と共産運動

ドイツでヒットラーが台頭してきた頃、日本もグチャグチャになっていました。

 

井上準之助蔵相の失政によって発生した「昭和恐慌」。

 

その恐慌を終息させた高橋是清蔵相は二・二六事件で暗殺されてしまいます。

 

高橋是清の後任、馬場^一蔵相はインフレを考慮せずに大量の国債を発行して軍事費につぎ込みました。

これだけ無茶なことをやってしまったため、悪性インフレの弊害が表れ、日本は経済成長しないのに物価だけが上がるという事態に陥りました。

 

第二次世界大戦前夜はこうした経済失政に加えて、「日本を滅ぼしたい人たち」による共産運動も盛んで、読んでいて本当に大変な時代だったことを痛感させられました。

 

そして、その後の日本がどうなったかはご存知の通りです。

 

まとめ(政治も経済も人々を幸せにするための道具である)

「経済で読み解く日本史」はこの第5巻の最後に昭和末期に発生したバブル景気について語ったところで終わります。

 

室町時代から昭和末期まで約650年間。

 

「経済」を軸にして日本史を振り返ってみれば、色々なことがありました。

 

そして著者はあとがきの中でこのように語ります。

日本経済の歴史を振り返るにつけ、なぜ正しい政策が実行されないのか本当にもどかしく思います。いい加減に日本人は過去の歴史に学んだ方がいい。

戦争を悪と決めつけてそこから目をそらしても何の教訓も得られません。なぜ、人々が戦争に熱狂し、対米開戦に狂喜乱舞したのか?その根本的な原因は経済失政にあります。

 

この言葉を読みながら私は一つの言葉を思い出しました。

政治も経済も人々を幸せにするための道具だ

 

これはあるお坊さんの言葉です。

 

本来は人々を幸せにするための経済が逆に人々を不幸にして国家を破壊するようなことが歴史上、何度もありました。

 

私、本音の部分では政治も経済も専門家である政治家や官僚、エコノミストがしっかりやってくれれば、一般の私たちはそれぞれ自分の生活に励めばいいと思ってます。

 

政治も経済も難しいしね。。

 

でも、ほんのちょっと経済をかじっている私にも分かるようなトンデモ理論を語る政治家や経済評論家がいるのも事実なんですよね。

 

そんな妄言を信じて、道を誤ってはいけません!

「歴史に経済というモノサシを当てはめれば今まで見えてなかったものが見えてくる」と私は本シリーズで繰り返し述べました。

読者の皆様におかれましても、今度はそのモノサシをぜひ未来にも当ててみてください。そうすることで、二度とこの国が誤った政策を選択しないようにお役立ていただければと思います。

 

「歴史(を)学ぶ」ということは、過去にフォーカスすることだと思います。

 

それに対して「歴史(に)学ぶ」というのは、未来にフォーカスすることだと思うのです。

 

この本を読んで、私たちが考えなければいけないのは「歴史(に)学ぶ」ことですよね。

 

posted by penguin-oyaji at 20:00 | Comment(0) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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