2016年07月20日

よその国を笑ってなんかいられない【「農協 月へ行く」筒井康隆】

農協月へ行く

「農協 月へ行く」筒井康隆:著角川文庫

ふと思い出して、昔々に読んだ筒井康隆の短編集「農協 月へ行く」を本棚から引っ張りだして読みなおしてみた。

Amazonの内容紹介

厚かましいバイタリティで外国の辞書にも載ったノーキョーさんが月を行く。無重力の宇宙船の中でドンチャン騒ぎ、酒や芸者を強要する土地成金ぶり。好奇心旺盛な彼らが月面で見たのは?

かつて農協の団体旅行が「ノーキョー」と呼ばれ、海外へ出掛けていっては傍若無人に振る舞い、世界から笑われていた・・・そんな時代があったんですよ。

この筒井康隆の短編「農協 月へ行く」はそんな恥ずかしい団体旅行の有り様をパロディにした作品なのです。

あくまでも小説であり、フィクションなのだけど描かれている団体旅行の様子が、さもありなんな感じなので、オカシイやら恥ずかしいやら。。

そもそも日本には昔から「旅の恥はかき捨て」という言葉があるくらいだから、旅先で他人の迷惑顧みず自分勝手に傍若無人に振る舞うという(とても恥ずかしい)文化が蔓延しているのかも知れない。。

ノーキョーと呼ばれて世界から笑われていたのは、1960年代から70年代の頃だと思うのだけど、それから十数年後のバブルに踊っていた1980年代から90年代。

その頃になると、ニューヨークやパリの有名ブランドショップに日本人が大挙して押し掛けバッグやらスカーフやらをまとめ買いしている様が、やはりヒンシュクをかい笑われていた。

◆◇◆◇◆◇

先月(2016年6月)、アジアで最大規模となる上海ディズニーランドが開演した。開園日の前後はテレビのニュースやワイドショーでも大きく報じられていた。

だけど

・園内に落書きをしている人がいる・パレードの沿道にゴミをポイ捨てする人がいる・植え込みで子供に用を足させている親がいる・偽物(模倣品)のキャラクターグッズが売られている・通路上で勝手に弁当を拡げて食べている家族連れがいる

などなど、そのマナーの悪さをあげつらう報道が多かったように思う。そして、そんなニュースを見る度に私は「こーいうのを目くそ鼻くそを笑うって言うんだろうなぁ」と思っていた。

ついでに書けば、こういう報道によって知らず知らずのうちに印象操作されてしまうんだろうなぁ〜、とも思った。

だって、たかが4、50年前にはノーキョーと笑われて、2、30年前には今でいう爆買いを世界中でやっていたのは私たち日本人ですからね。

よその国のことを笑っている場合ではない。

たぶん・・・

文化が発展していく段階で、どこの国でも同じような問題が起こり同じような恥ずかしいことをしでかすのだと思う。

◆◇◆◇◆◇

調べてみたら、この短編集が発売されたのは1973年というから今から40年以上前だ。あれから40年!(←綾小路きみまろ風に)ブラックユーモアに彩られたこの短編を読んで素直に笑えないのは(むしろ、恥ずかしさを感じるのは)過去の自分たちの行いを棚上げにして、よその国を笑う。そんな今の日本の文化を恥ずかしいと思うからだ。

【▼文庫本】

【▼キンドル版】

posted by penguin-oyaji at 21:29 | Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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