2015年02月13日

【椎名誠「アイスランド 絶景と幸福の国へ」】大切なものを何処かに置き忘れ気が付くと僕は今何をしているんだろう?

 

「アイスランド 絶景と幸福の国へ」
椎名誠:著
日経ナショナルジオグラフィック社

学生の頃、重度のシーナ中毒者だった私。
新刊が出ると片っ端から読みあさってました。
(けっこう多作だったので、追いかけるのがタイヘンでしたけど)

でも、「アドバード」あたりを最後に
椎名さんの著書を読むこともなくなって・・・
と言うよりは社会人になって本自体を
あまり読まなくなってしまってた。。

そして今回、数十年ぶりに椎名さんの新作を手にして
読んでみたら・・・

Amazonの内容紹介

南米パタゴニアから北極圏まで、世界を旅した作家が
“最後のでっかい旅"に選んだ行き先はアイスランドだった。
その理由は、独特の絶景や大自然、そして、敬愛する作家
ジュール・ヴェルヌの『地底旅行』の舞台であると同時に、
幸福度、安全度、女性の社会進出度などさまざまなランキングの
上位国だから。著者が実際に見て聞いて書いた「幸せの国の現実」
とあわせ、でっかい旅の総括ともいえる長い「おわりに」では、
これまでに訪れた世界各国の幸せについても振りかえる。
また、著者の撮り下ろしに加え、ナショジオの絶景写真を31点収録。
絶景と幸福の国を写真でも楽しめます。
美しい国とは―、幸せな国とは―。いまだからこそ読みたいアイスランド紀行。

■幸せって・・・?

ぼくの今度のアイスランドの旅には、いくつかテーマを持って
きていたが、
そのうちのひとつが、この国の国民の「幸福度」の
現実だった。何年か前に
「幸福度指数」が世界九位になったことが
あるという。その実態や理由を
知りたかった。(P72)

幸福とは何か?と問えば、個人の価値観が多種多様であるのと同じように
幸福について人の数だけ違う答えがあるに違いない。

だけど、「幸福な国」あるいは「幸福な社会」とは何かと問えば、
答えはもう少し絞られるのかも知れない。

椎名さんによれば、このアイスランドという国は

軍隊はなく、原発もない。しかし税金は高く、物価も高いが、
政府による
その高い税金の還元が目で見えるかたちでなされて
いるからなのだろう、
多くの国民は、おだやかでシアワセそう
な顔をしている。みんな「この国は
安全で、犯罪などない」という。
警察はあるが銃を保持せず、殺人事件なども
殆どない。滞在中に
パトカーはついに見かけなかった。(P9)

そんな国なんだそうだ。

この本は椎名さんによるアイスランドの旅行記なので、
行く先々での人々の暮らしぶりや自然の情景が綴られている。

そして、文章だけでなくナショナルジオグラフィックの美しい写真と
椎名さんによるモノクロ写真が数多く収録されているので、
視覚的にもアイスランドがどういうところなのかを理解し、
楽しむことができるようになっている。

話しを戻すけれど・・・

この本の文章と写真で感じるアイスランドという国(社会)が
果たして「幸福」なのかどうかという判断は
やはり人それぞれなんだろうと思う。。

だけど、

旅っていうのは、単に行く先々の風景や人々の暮らしぶりを
見て感じて楽しむだけでなく、
その場所から、自分が暮らしているところを振り返って見直してみる、
そんな新しい視点を手に入れる機会でもあると思うのだ。

軍隊も原発もなく、
殺人を含めて犯罪が殆どなく
だけど、税金や物価も高い
幸福度ランキング9位のアイスランドという国を通して
私たちが住む日本という国(社会)を省みた時に
そこにあるのは果たして「幸福」なのか、
それとも・・・

この本はそんな「幸福な国」「幸福な社会」について
考えてみる良い機会を与えてくれる本だと思った。

■大切なモノを何処かに置き忘れ、気がつくと僕は今、何をしているんだろう?

子供の頃に抱いた”夢”は、愚直ながらもとにかくずっと追求して
いたら結構実現してしまうものなのだ、「夢」はかなうものなのだ、
ということをぼくはぼんやししながらも確信したのだった(P131)

今回この本を読みながら思い出したことがある。

自分が若い頃(つまり、重度のシーナ中毒者だった頃)、
椎名さんの「パタゴニア あるいは風とタンポポの物語り」という旅行記を
読み、いつか自分もその地を旅してみたいものだと思った。

そして同時に、今のような人生を送っていたら、
きっとほぼ間違いなく私はパタゴニアに行くことなく
人生を終えてしまうだろう、と思ったのだ。

このアイスランドの旅で椎名さんは敬愛する作家、
ジュール・ヴェルヌの『地底旅行』の舞台となった場所に立っている。

「夢はかなうものだ」と椎名さんは書いている。
だけど・・・その昔、サラリーマンをしていた椎名さんが、
もしもそんまま会社勤めを続けていたら、作家になっていなかったら、
果たして椎名さんの「夢」はかなっていたのだろうか?

抽象的な書き方で申し訳ないのだけど、
夢をかなえるためには、その夢に近づくような人生を選択しないと
いけないのではないか・・・と思う。

子供の頃、あるいは青春時代に小説でもいい、映画でもいい
あんなふうに生きたい!
こんなことをしたい!
そんな憧れの人生を夢見た経験は私だけでなく、
多くの人にあるのではないかと思う。

だけど、

オトナになって、仕事をして生活に追われているうちに
いつしかそんな子供の頃の夢は何処かに置き忘れてしまい
夢見たのとはほど遠い人生を送ってしまっていた。。。

この本を読んで私は、そんなちょっとほろ苦い現実も一緒に
突き付けられたような気がした。

大切なものを 何処かに置き忘れ
気が付くと僕は今 何をしてるんだろう
夜空を見上げると 多くの夢が
星になり風になり 踊って見える

吉田拓郎「若い人」

◆最後に・・・

椎名さんは昔から極寒のシベリア、タクラマカン砂漠や
パタゴニアなどなど辺境と言われるようなところを
何度も旅してきた作家さんである。

だからというワケでもないのだろうけれど、
椎名さんの本を読むと異国の地と比べて
我が日本の社会がどれだけオカシなことになっているか、
というようなことがよく書かれている。

若い頃、そんな椎名さんの作品を読む度に
そーだ!そーだ!と激しく同意したことも数知れず。。

上の方でも書いたけど、
「旅」っていうのは、異国や見知らぬ場所に立ち肌で感じるものから
新しい視点を得る機会でもあると思うんですよね。

自分で実際にそんな辺境を旅する機会のなかった私にとって
数多くの椎名さんの旅行記を読むことで
バーチャルな世界旅行を楽しんだり、
改めて日本の社会というものを考えてみる教科書でもあったのです。

北米大陸とヨーロッパ大陸(ユーラシア大陸)の中間、
北極圏近くに浮かぶ島国「アイスランド」

「幸福」というテーマを持ってそのアイスランドを旅した
椎名さんが出した一つの結論。
それが最後の方に書かれているのだけど、
読んでいて深く考えさせられるものでした。
※詳細はネタバレ自重ということで・・・
 是非とも本書を手に取って読んでそして考えて貰いたいと思う。。

それから、これも既に上の方で書いたけれど
この本にはナショナルジオグラフィックの美しい写真や
椎名さんが現地で撮ったモノクロの写真が
数多く掲載されているので、読まずとも見るだけでも
アイスランドという国を楽しめるようになっている。
本屋さんで見かけたら、先ずはその写真を楽しんでみるのも
良いのではないかと思うのでした。

おしまい。

  

posted by penguin-oyaji at 22:58 | Comment(0) | 読書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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