2013年10月15日

翌檜(あすなろ)の哀しみ【百田尚樹:「モンスター」】

モンスター (幻冬舎文庫) 

「モンスター」

百田尚樹:著

幻冬舎文庫

このブログで久々の「小説」記事です!

こちらのブログでこの本を紹介しているのを読み、「おっ、面白そうじゃん!」と思い手にとりました。

でも、本屋さんで帯を見たら既に80万部突破のベストセラーで映画も製作されて公開されたとか・・・

全然、知りませんでした!!(^^;;

「産業カウンセラー」を学ぶお話好き 外見ゆえのヒエラルヒー〜「モンスター」

文庫版で487ページとけっこう分厚いのですが、読み始めたら面白くて一気読み!

久々のジェットコースター本でした。

Amazonの内容紹介 

田舎町で瀟洒なレストランを経営する絶世の美女・未帆。

彼女の顔はかつて畸形的なまでに醜かった。

周囲からバケモノ扱いされる悲惨な日々。思い悩んだ末に

ある事件を起こし、町を追われた 未帆は、整形手術に目覚め、

莫大な金額をかけ完璧な美人に変身を遂げる。

そのとき亡霊のように甦ってきたのは、ひとりの男への、

狂おしいまでの情念だった。

ひたすらモテない日々

私はブスだった。

いや、ブスという言葉は軽過ぎるーーーそう、私の顔は畸形的とも

いえる醜さだった。(P37)

物語の前半、畸形的とも言えるほどに醜く生まれてきた少女が親や周囲の子どもたちから「ブス」「バケモノ」と呼ばれながらも男の子に恋をして、でも結局は報われない・・・

そんな話しが続きます。 

醜い少女が愛された話はどこにもない。

美しくない女はヒロインになれないと、多くの物語は教えてくれる。

映画のヒロインは皆美人で、少女漫画のヒロインはみんな可愛い。

(中略)

私のようなブタでブスは女でもないのだ。

私には恋なんて縁のないものだと思っていた。(P52)

自分が異性にモテないのは、外見がブスだからだ。

しかし、外見がどうであれ思春期と呼ばれる時期になると人は恋をする。

こんなブスな自分でももしかしたら・・・!

外見よりも性格で選ぶ人だっているかも知れない。

そんな淡い期待を抱きつつも、結局は報われずに散っていく。。

15・16・17と私の青春、暗かった・・・

そんな人生でしたからね、私も。

読みながら、「そうそう、その気持ち分かるわぁ!」と妙に納得しつつ共感しながら読みましたよ。

この本の中に「美人は得をする」みたいなことも書いてありますが、それは男も同じこと。

格好よくて、スポーツもできて、頭もいい!

そういう男(私の敵じゃ!)は、早い時期から女の子にモテるから、女性との付き合い方も磨かれていき、ますますモテるようになるという好循環が生まれます。

私のようにモテないと、デートするにもオドオドして女性から呆れられ、「モテないスパイラル」からなかなか脱却できないんですよ。。

おっと、私のモテない自虐ネタは横に置いておかないと、

いつまでも話が進まない。。

変身願望

主人公が社会人になったある日、たまたま雑誌に掲載されていた美容整形の広告に目がとまり、二重瞼になるための整形手術を受けます。 

ーーーあの日、私が欲しかったのはこの目だ。

ついに手に入れた。たったの八万四千円で。ずっと欲しくて永久に

手に入らないと諦めていたものは、こんなわずかな金で手に入る

ものだったのだ。なぜ誰も教えてくれなかったのだ。(P157)

整形により美しくなる手段を知った主人公は同時に、見た目が変わることにより周囲の反応が変わることも知ります。

物語の中で初めて街でナンパされたシーンは象徴的。

二重瞼になる整形を皮切りにして、鼻、口元などなど次々に整形を繰り返していき、その度ごとに周囲の反応もどんどんと変わっていきます。

そして最後には「絶世の美女」へと変貌を遂げるのです。

もちろん、整形を受けるための費用を稼ぐための生活の苦労も描かれていて、「そこまでしても、綺麗になりたいのか?」と思わずにはいられませんでしたが・・・

整形を受ける度に「美のヒエラルキー」の中での自分のポジションが上がっていく。

最下層にいた頃は「ブス」「バケモノ」と呼ばれていたのが整形を受けて綺麗になっていくごとに街でナンパされたり、「愛している」と囁く男性が現れたりして確実に自分のポジションがあがっていくのを実感するわけですね。

整形を受けるかどうかは別として、「変身願望」を持っている人は割と多いのではないかと思う。

例えば髪型を変えてみたり、女性だったらメイクを変えてみる。

眼鏡を変えてみるだけでも印象って変わる。

コスプレなんかも変身願望の表れですよね。

何故、人は変身してみたいと思うのか・・・?

理由は人それぞれだと思うけど、私は変身することによって、今の自分とは違う人生を味わってみたい!

そんな願望が心のどこかにあるのではないかと思う。

もしかしたら、歩んでいたかも知れない別の人生。

「人は見た目が9割」とかっていう本もありますが、外見を変えることで、周囲の人の反応も変わるというのはやっぱり事実だと思うのです。

周囲の人から「ブス」「バケモノ」と言われる人生と「綺麗だね」「素敵だ」と言われる人生。

そのどちらを選びたいですか?

もしも、今の自分が「人並み」「十人並み」であったとしても、ほんの少し勇気を出して、変身することで綺麗と言われる人生を味わうことが出来るとしたら・・・

主人公はある意味、病的とも言えるほど何かに憑かれたように整形を繰り返すという極端な行動に出ますが、多くの人が心のどこかに抱いている変身願望を描いているとも考えられるのではないかと思うのです。

翌檜(あすなろ)

整形によって、見た目が変わり、周囲の反応も変わると書きましたが、変わるのはそれだけではなく、自分の心の在り方も変わっていくんですね。

そして・・・

絶世の美女へと変身できたからこそ、「もしかしたら、今なら・・・」と断ち切った筈の昔の恋へと向かっていき、物語は結末に向けて走り出します。

実は物語の中で主人公の女性は同一人物であるにもかかわらず、田淵和子と鈴原未帆という二つの名前を持っています。

(なぜか?については読んでみて下さいね)

「田淵和子」が畸形的とも言われるほど醜い少女時代の名前で、「鈴原未帆」はその醜い外見から整形を繰り返し絶世の美女へと変身を遂げた名前、そんな感じです。

鈴原未帆は絶世の美女へ生まれ変わったわけですから世の男性どもが放ってはおかない。

だけど・・・最後、田淵和子として愛されることを欲するのです。

それが、映画化された時のコピー

「私はバケモノ。それでも愛してくれる?」につながるのですが・・・

ネタバレ自重で詳しくは書きませんが、この物語の最後をどう意味付けするかは、きっと読む人によって違ってくるんだろうなぁ、って思います。

私はエピローグの最後の1行を読んだ時に、鳥肌が立ちましたが。

話が少しそれますが・・・

「翌檜(あすなろ)」という樹をご存知ですか?

見た目は檜(ひのき)のようなんだけど、やはり別種なので、当然、翌檜が檜の樹になることはないんですね。

翌檜という名前については「明日は檜のように立派な樹になろう」→「明日はなろう」→「あすなろ」という謂れがあり、叶わぬ願いを表すとも言われてます。

(※さだまさしの「明日檜」はそんな歌です)

この物語を最後まで読み終えた時、「これは田淵和子にとってのあすなろ物語」だと思いました。

整形を繰り返し、絶世の美女へと変身し、手に入れたかったものに手を伸ばす。

だけど・・・

翌檜がヒノキになれないように、田淵和子もまた。。

最後に・・・

読みながら思ったもう一つのこと。

男が女心を描くのはとても難しい・・・ということです。

うまく言葉にできないのだけど、読んでいても主人公の心理描写になんだか分からない違和感を感じたんですよね。。

確かに女性の心理を描こうとしているんだけど、どこか男目線というか、男が理解している女心とでもいうのでしょうか。。

それは読んでいる私が男だからなのかも知れないけど・・・

女心ってもっとどこか男が理解し得ないミステリアスな部分があると思うんだけどなぁ・・・

女性がこの物語を読むと主人公の女心はどんなふうに感じるのでしょう?



posted by penguin-oyaji at 18:18 | Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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