2013年03月18日

ファイト!闘う君の唄を・・・「彼らの流儀」

彼らの流儀 (新潮文庫)

「彼らの流儀」

沢木耕太郎:著

新潮文庫

 

10代の後半から20代に掛けて、かなり熱心にルポライター・沢木耕太郎の著作を読んでいた。

 

そんな昔に読んだ沢木の著作の中に朝日新聞紙上で連載していたコラムをまとめた「彼らの流儀」という本がある。

 

著名人から無名の市井の人まで人生の一コマを切り取ったエッセイのような文章が全部で33篇おさめられている。

 

その本を何となく読み返してみた。

 

「ホットライン」と題されたコラムのところでページをめくる手が止まった。

 

そこには、昔のラジオ番組の中で若者とパーソナリティの電話越しのやり取りが克明に書かれていた。 

 

二昔前のラジオ番組である「青春ホットライン」には、電話を掛けてきた聴取者とそれを受けるパーソナリティーとの間で、たとえばこんなやりとりもあった。

「・・・・・・・」

少年が電話口でしゃくりあげている。

「どうしたんだい?もしもし?」

関西なまりのある男がやさしい口調で呼びかけると、しばらくしてようやく少年の口が開かれる。

「仕事を始めて二年になるんだけど、俺、やっぱり進学したかったんですよね。みんなと一緒に、高校へ。

でも、うち、行くお金もなくてさ、そいで働かなくちゃいけないなんて言われてさ。進学した奴が羨ましくて、憎くてさ。いまだに、二年間も悔しくてしょうがないんだ」

 

(中略)

 

「夜は何時まで?」

「だいたい十一時くらいまで」

「寝るのは?」

「一時か二時くらい」

 

(中略)

 

「十一時から一時まで、何をしてますか」

「別に何も・・・」

「勉強しろよ。悔しいんだったら勉強しろよ。あのね、俺もね、十六の時、一年でやめたんだよ、高校を」

「なんでやめたんですか」

「あなたと同じような理由だね」

「そんなことないですよ」

「どうしてそんなことないと決めつけるの。俺は船乗りをやって、家に送金したよ。だけど、やる気があったからね、俺は。勉強したよ。

悔しい悔しいって思うだけで一生終わったら、悔しいの嘘になるよ。

悔しかったらやらないとしょうがないよ。そうだろ、違う?」

 

(中略)

 

「君の気持ちでどうにでもなれるんだよ。意地でもやってみろよ、え、男の子じゃないか」

「はい・・・」

「ね、できるよ。泣くことができる人だもん、悔しくてさ。やれるはずだよ、な、え?」

「はい・・・」

「な、おやすみ」

「はい・・・ありがとう」

 

読みながら不覚にも涙が流れた。

 

国、時代、両親、性別を選ぶことなく人は生まれてくる。

 

つまり、生まれた瞬間から一定の制約と言うか、条件の中で生きていくことになる。

 

たまたま生まれた家が貧しくて、高校に進学できなかった。。

 

でも、それをいくら嘆いてみたところで自分の家庭環境が変わるわけじゃない。

 

結局、自分の人生は自分の力で切り開いていくしかないのだ。

 

ビジネス書作家の和田裕美さんがよく「手持ちのカードで勝負するしかない」というようなことを書いたり話されたりしているが、つまりは、そう言うことなんだと思う。

 

不遇を嘆くのではなく、諦めるのでもなく、自分の人生は自分の力で切り開いていくしかない

 

ある意味、人生は闘いなんだなぁって思った。

 

そして・・・

 

それは何も生まれた環境に限った話しではないことに気付く。

 

前回のエントリーの中でも書いたが、長い人生の中では雨が降ることもあれば、時には槍や鉄砲が降り掛かってくることもある。

 

そんな不幸な・・・ツラい目にあってしまった時、同情してくれる人もいるかもしれない、共感してくれる人だっているだろう。

 

あるいは、がんばれ!と励ましてくれる人だって。

 

でも、最終的に困難に立ち向かっていくのは自分自身だ。

 

そして・・・

 

そんな困難に立ち向かい、克服した者にしか言えない言葉がある。

 

「勉強しろよ。悔しいんだったら勉強しろよ。」

 

「君の気持ちでどうにでもなれるんだよ。意地でもやってみろよ」

 

変に甘やかすでもなく、突き放すでもなく、力強くも優しい言葉。

 

自分もそんな言葉を掛けてあげられる人でありたい。

 

読みながら、そんなコトをつくづくと思った。

 



posted by penguin-oyaji at 19:47 | Comment(0) | ルポルタージュ・ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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