2009年05月19日

極限状態での人の心理と生きる意味・・・「夜と霧」


Book-No.127


「夜と霧」(新版)

ヴィクトール・E・フランクル 著


池田 香代子 訳


みすず書房


こちら』のページで絶賛されていたのを読んで


手にとってみました。

長い間、読み継がれてきた名著ですので、


既に読まれた方も多いかも知れませんね。

内容はユダヤ人精神分析学者である著書が


ナチス強制収容所で体験したさまざまな出来事を


記録したものです。

そして単なる体験記にとどまらず、


収容所での暴力や虐待、あるいは仲間の死が


そこに収容されている者にどのような心理的影響を


及ぼすのかを、学者らしい冷静な眼で分析し、


記録されているのです。

あまりにも残忍で、過酷な状況での出来事なのに


感情的な描写は最低限に抑え


事実と心理学的な分析で綴られているのですが、


それが却って当時の悲惨な状況を生々しく


伝えているように感じました。

しかし、この本の主題というか、メインテーマは


ナチス強制収容所がどれだけ悲惨で非人道的なところで


あったのかを告発するものでもなく、


著者自身の酷い運命を訴えかけることでもないのです。

これ以上は無いと思えるような過酷な状況の中で


人の心理はどうなるのか、


人はなぜ生きるのか、


人間とは何か、


というように、人の心理の奥底に迫っていく事こそが


この本から読み取るべきことであるように思います。



しかし未来を、自分の未来をもはや信じることが


できなかった者は、収容所内で破綻した。そういう人は


未来とともに精神的なよりどころを失い、精神的に自分を


見捨て、身体的にも精神的にも破綻していったのだ」(P125)


極限的な状態の中にあっても「未来を信じる心」があれば、


人は耐えて生きていけるし、


逆に「未来の希望」が失われてしまうと、


心は折れ、命さえ落としてしまう・・・

これは普段の私たちの日常の中においても


同じように当てはまるような気がします。

明日は今日よりも良くなる」と信じていればこそ、


今がどんなに辛くても頑張れるけど、


もしも未来が暗いものであったら、


頑張る気力も萎えてしまいます・・・よね。


文中、こんなニーチェの言葉が引用されています。



なぜ生きるかを知っている者は、


どのように生きることにも耐えられる



悲しいこと、辛いことが続いた時、


ふと、「何のために生きているのだろう?」と


考えてしまうことがありました。

意味がわからない苦しみは、


単なる精神的な拷問に過ぎませんが、


与えられる「苦痛」にさえ、その意味を見出すことができれば


自分が生きる意味を理解し、


ひとは耐えて生きていける・・・ということでしょうか。


今の自分の苦しみを肯定的に受け入れ、


明日への希望を持ち続けることが


どれだけ人間を強くするものなのかを、


この本から私は感じました。


最後にもう一つだけ、文中から引用します。

自分を待っている仕事や愛する人間にたいする責任を


自覚した人間は、生きることから降りられない。まさに、


自分が「なぜ」存在するかを知っているので、ほとんど


あらゆる「どのように」にも耐えられるのだ」(P134)

著者、フランクル氏が何故、苛酷な環境の中で


生き続けることに絶望せず、苦しみに耐え抜き


生還できたのかが、


この言葉に表れているような気がするのです。



私の解釈はともかく・・・


本書が長い間、多くの人に読み継がれてきたのは


単なる強制収容所の体験記ではなく、


フランクル氏が身をもって体験した中から導き出された


人の心理(真理)に触れることが出来るからだと


思うのです。

そして、その真理は時を越えた現在の私たちの心にも


深く響いてくるように思います。。

■最後に・・・・

私の場合・・・


最初に読んだときは、強制収容所での


無残な出来事の数々があまりにも強烈すぎて


ドキュメンタリーのように読んでしまいました。

でも、少し冷静になって読み返してみると


人の心の動きや、筆者の「生」に対する肯定感などが


浮かび上がってきて、より深く筆者の言葉を


受け止めることができたような気がします・・・

また、時期を変えて読み返してみると


新たな気付きや感動があるかも知れません。

今さら私がここでお奨めしなくてもいいくらいの名著ですが、


もし読まれていないようであれば、


一度、手に取ってみるのもよいのではないでしょうか。

今日もお付き合いくださり、ありがとうございました。

【▼単行本】

【▼kindle版】


この記事へのコメント
おはようございます。

この本、産業カウンセラー養成講座の授業の中で「心理学」の本として紹介されました。
「ユダヤ収容所の話と思っているでしょうが、
心理学の素晴しい教科書です。」
と、勧められたのに課題に負われているうちに忘れていました。
中身については、詳しく紹介されなかったので今回の記事、本当に興味深く読みました。

今またキャリアを受け始めた時期にこの様に紹介されたのも、意味があるのでしょう。
必ず読みたいと思います。

いつもありがとうございます。
Posted by eries.m at 2009年05月20日 06:30
ペンギンおやじさん、こんにちは!

心理学に興味があるので、夜の霧には興味を持っています。
なら、買えよ、って話なんですが(汗

人間の心理に隠された論理を辿っていくと、最終地点は本能的な欲求に辿りつくと思っています。
最もたる根源が「生きたい!」っていう欲求だと思うのですが、この本では「愛と生」について語られていて(ペンギンおやじさんの記事を読んで思ったことです)、おもしろそうです。

僕も必ず読んでみます。

いつも素晴らしい記事をありがとうございます!
Posted by しのの at 2009年05月20日 10:29
ペンギンオヤジさん

こんばんは。

突然ですが困りました。

何が?

なぜならペンギンオヤジさんの紹介する本がすごく気になるものばかりで手元に未読本がたくさんあるのに買いたくなってしまうことです。

これもペンギンオヤジさんの抜群の文章力のなせる技でしょう。いつもブログを読むたびに本当にそう思います。

「夜と霧」も以前から興味は持っていたのですがさらに興味がわきました。

きっと買ってしまうんだろうなあ〜
(未読本もなんとかしないと)

更新ありがとうございました。
Posted by kaizokou at 2009年05月20日 19:27
eries.mさん、こんばんは。

この本は色々なところで推薦されているんですね。
私も最初に読んだ時は強制収容所でのノン・フィクションのように
読みましたが、この本のキモはやっぱり「人の心理」なんですよね。

この時期に・・・・「偶然は必然」であれば良いのですが、
でも、本当に良い本だと思いますので、是非一度は
手に取ってみて下さいね^^

いつも、ありがとうございます。
Posted by penguin-oyaji at 2009年05月20日 20:18
しののさん、こんばんは。

心理学にも興味をお持ちなんですねぇ。
マズローの欲求五段階説を持ち出すまでもなく、
人の根源的な欲求は「生きたい」だと思うのです。

が・・・

極限状態に陥った時に、「何か」が生存欲求を持ち続ける人と、
あきらめる人に分けてしまうんですよね。

そんな事が感じられる内容でした。

こちらこそ、いつもありがとうございます。
Posted by penguin-oyaji at 2009年05月20日 20:25
kaizokuouさん、こんばんは。

何だか、ご迷惑をおかけしているようで・・・(笑)
本当に読みたい本が次から次へと・・・困りますよね〜
私も未読本は山のように積んでいます。。。

でも、読みたい本がいっぱいあるのは、
好奇心と学習意欲の裏返しでもあると思うので、
「良い事だ!」と自分に言い訳してます(汗)

文章力・・・まだまだ未熟ですが、
嬉しい言葉をありがとうございます^^

では、お互いに未読本の山に突入しましょう!!

いつも、ありがとうございます。
Posted by penguin-oyaji at 2009年05月20日 20:31
ペンギンオヤジさん

今回の本は、普通のビジネス書ではなく、ドキュメンタリーかと思えばそうでもなく、心理学の本なのですね。

心理学、私も興味あります。強制収容所での描写とかのところがが怖いのかなと、ちょっと心配ではありますが、チャレンジしてみようかな〜(怖いものは、映画とかも全くの苦手なので)。

「自分を待っている仕事や愛する人間にたいする責任を
自覚した人間は、生きることから降りられない。まさに、
自分が「なぜ」存在するかを知っているので、ほとんど
あらゆる「どのように」にも耐えられるのだ」
のところは、心に感じるものがありますね...

いつも、良書の紹介、ありがとうございます。
Posted by haru at 2009年05月20日 22:23
haruさん、こんばんは。

そうですね、全くの心理学の本という事ではないのですが、
書かれている内容は人の心理を分析したものになっています。

強制収容所の描写は、それなりにありますよ。
私も最初に読んだ時は、あまり悲惨さに目をそらしたくなりました。
でも、読んで損はないと(強く)思います!

人は誰かに頼られたりすることで、自分の存在を
肯定できるものなのかも知れませんね。。
人間は「人の間で」生きている事を感じる名文だと思いました。

こちらこそ、いつもありがとうございます。
Posted by penguin-oyaji at 2009年05月21日 22:27
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