2008年12月09日

愚直に生きた男の物語


Book-No.85
「粗にして野だが卑ではない」
石田禮助の生涯

城山三郎 著
文春文庫

熊野へ行ったときに、往復の飛行機の中で読みました。
・・・と言っても、この本が単行本として出版された当時に
一度読んでいるので、実に20数年ぶりの再読なのですが・・・

さて、本書は三井物産社長から第5代国鉄総裁になった
石田禮助氏の半生について城山三郎氏が筆を取ったものです。

気になって、チョッと調べてみたら・・・
国鉄が分割民営化でJRに変わったのって、1987年(昭和62年)と
今からもう20年以上も前になるのですね。
・・・という事は、今の二十歳前後の若者たちには「国鉄」という
記憶が無いということかぁ・・・ウーム

話が横道に逸れましたが、
石田禮助氏、良いですっ!
こういう生き方に、ちょっと憧れてしまいます。
一本気に生きた男って感じです。

例によって書きたい事はいっぱいあるのですが、
・正義を貫いた生き方
・行動基準としての「卑ではない」
・天国への旅券
この3点について、書きたいと思います。

■正義を貫いた生き方
国鉄監査委員長時代、石田は「もうからなけりゃやっちゃいかん」と
しきりに効率を説いてきたが、しかし、安全については例外としていた。
老朽化した青函連絡船の更新を強く推進してきたし、十河総裁が
線路保守費を大幅削減することを決めると、石田は十河に迫って、
全額復活させた
」(P148)

とにかく、安全の確保。安全のためには、金も時間も一切惜しんでは
ならない
」(P152)

仕事や事業をしていく上で何を最優先事項にしていくかという話しがありますね。
例えば、小売業であれば店舗の安全性であり、商品の安全性がとにかく第一だと
思っています。
しかし、そこに「お金」とか「経費」が絡んでくると急に目をつむってしまう・・・
そんな事が現場では日常的にあるのではないかと・・・

運輸業である国鉄(今のJR)にとっての最優先事項は、やはり「安全」で
あった筈です。
しかし、当時まだ国の一機関であった国鉄にとっては予算は国との折衝が
必要で、国鉄総裁が国会に出向いて行ったりしていたんですね。

昭和39年度予算として例年の倍以上の金額を要求したところ、
これを大蔵省(今の財務省)が平年並みにごっそりと削減してしまいます。
予算要求は山をかけたのではない。事は人命にかかわる。どうしても必要だから
要求したのに、なぜ政府も国会も応えてくれないのか。
石田はその思いを、年の明けた2月7日の衆議院運輸委員会で吐き出す
」(P154)
この後、石田総裁が国会を舞台に、必要予算を獲得するための奮闘振りが
描かれていて、その主張の正しさに胸がすくような思いがします。

組織の中にいると、「正しいこと」を「正しい」と言うだけでも
大変な場面があったりすると思うのですが、
国会という大舞台でも臆することなく、正義を貫く姿に感動させられます。

また、正義の見方みたいな顔をして正論を吐く人って、
周りからすると、ちょっと疎ましいと言うか、
嫌われたりすることもあると思うのですが、
石田氏の場合はそうはならない。

予算をけずられ、孤軍ふんとうしているのをみると、野党としても
”石田がんばれ”とバックアップしたくなるね
」(P163)

正義を貫いた上で、愛されるべき人柄として多くの人から慕われる・・・
願わくば、そんな生き方をしてみたいものだと思います。

■行動基準としての「卑ではない」
国鉄総裁になり、はじめて国会へ呼ばれたとき、石田は代議士たちを前に
自己紹介した。
「粗にして野だが卑ではないつもり」
」(P12)

この本のタイトルにもなった「粗にして野だが卑ではない」というのは、
上記のように、石田氏が国会で述べた自己紹介の一部なのです。

石田自身も、国鉄総裁用として渡されていた全日空、営団地下鉄、東武など
八社の優待パスをすべて返上した。
モラルあってのソロバンである。正々堂々と働き、正々堂々と生きよ・・・・
石田の言いたかったのは、そういうことであった
」(P172)

自分自身の行動基準というか、価値判断の基準として
一本、スジを通す」ということの大切さですね。

下手に権力だとか地位を手にしてしまうと、
急に自分が偉くなったような気になってしまって、「何でもアリ」になってしまう人って
たまにいませんか?

自分の話で恐縮なのですが、
20代半ばから10年間くらいバイヤーとして、取引先(問屋、商社など)から
商品の買い付けをする仕事をしていた事があります。

取引先の営業マンからすると、バイヤーの首を立てに振らせれば、
商品が売れるわけですから、それこそ接待だとか、お車代だといって
バイヤーをあの手この手で持ち上げてくれるような事をする取引先もありました。
時には何処で調べたのか自宅に付け届けを送ってくるようなところも・・・

勘違いをしてはいけないのが、自分が偉い訳ではなくて、
自分が背負っている会社の看板に対して、取引先は頭を下げている訳です。
それなのに・・・
取引先に対して横柄な態度をとったり、無言のうちに接待を強要するような事を
言ったりする先輩方を何人も見てしまったんですね。

個人的に、そういうのが大嫌いだったので、
接待は受けたことありませんし、
展示会に行ってお土産と一緒に「車代」と書かれた封筒なんか渡された日には
それを受付に置いて帰ってきました。
もちろん自宅に来たお歳暮は裏判をついて、返送しました。
部下を持つようになってからは、
取引先から袖の下を貰ったりしたら、即刻クビにして俺も責任を取って辞めるから、
そのつもりで・・・
」と新任のバイヤーに対しては必ず言っていました。

周囲からは、何もそこまで・・・と言われた事もあるのですが、
やはり、誰からも後ろ指をさされたくないと思うのです。

石田氏には、到底かないませんが、
自分の行動基準として、「一本スジを通す」ということを、
いつまでも忘れたくありません。

■天国への旅券
商売に徹して生きた後は、「パブリック・サービス」。世の中のために尽くす。
そこではじめて天国へ行ける。
石田は、
「これでパスポート・フォア・ヘブン(天国への旅券)を与えられた」
とも言った
」(P19)

ちょっと前から気になっていたのですが
功成り名遂げた人は何故、世のため人のためと言いだすのか?と。
少し(かなり)ひねている私は、「年取ると名誉欲が出てくるのかな?」と
斜に構えたような事を思っていたのですが、
この石田氏の言葉を読んで、「なるほどね」と思ったのでした。

ちょっと、宗教チックな物言いになってしまいますが、
人のために頑張る、人のお役に立つことを自分の人生の最後に成し遂げることで
人生を全うした」というような気持ちになるのかな?って思うのです。

誰かのために役立ったという事で、自分の人生はムダではなかった、
そんなふうな心境になるのかもしれません。
若輩者ですので、とてもまだ、そんな達観した気持ちは分からないのですが、
誰かのために働ける、生きていけるという事が幸せ、という気持ちは感じながら
日々を過ごしていきたいと思うのです。

ちょっと、まとめがキレイ過ぎますかね?(笑)

いつも、お付き合いくださって、ありがとうございます。


【▼文庫本】


【▼kindle版】



タグ:城山三郎
posted by penguin-oyaji at 23:10 | Comment(4) | TrackBack(0) | ビジネス書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ペンギンオヤジさん

こんばんは。
城山三郎さんの本はかなり前に「男子の本懐」を読んで感動しましたが、この本もそんなニオイがプンプンしますね。

>正義を貫いた上で、愛されるべき人柄として多くの人から慕われる

自分もこんな風ではありたいと思っていますし、ペンギンオヤジさんのバイヤー時代の自分を律していたところに、気持ちが引き締まった思いです。自分は結構イタズラもたくさんしてきたタイプなので。

>商売に徹して生きた後は、「パブリック・サービス」。世の中のために尽くす

これなんかは、勝間さんをはじめとするChabo!参加者のみなさんなんかは、商売もしながら、世の中のために尽くしているので時代は変わってきているのだと思います。そう思うとChabo!の仕組みのすごさを再確認できます。もちろん参加している人達のすごさも。

とにかくスジの通った生き方は忘れないようにしたいです。

更新ありがとうございました。
Posted by kaizokuou at 2008年12月11日 01:54
kaizokuouさん、こんばんは。

城山三郎さんの本って実はあまり読んでいないんですけど,
一言でいうと、「うまい!」ですよね。グングンと引き込まれて
一気に読んでしまうような書き方だなぁ、と感じました。

自分も、それなりに悪さもしてきましたよ^^
ただ、筋が通らない話は大嫌いなので、単純に言えば、
嫌な事を遠ざけていただけなのです。
組織の中で仕事をしていると、理不尽な事もあるし、
筋違いな事も言われたりするじゃないですか。
それら全てを自分の力でコントロールするのは無理だと思うけど、
自分の出来る範囲で出来ることはやる、そんなふうに思っています。

そうですね。今は商売をしながらパブリックな取り組みもできる
時代になってきているんですよね。
神田さんが来年は「社会起業元年になる」と話されていましたが、
企業自体の在り方も、利潤追求だけでなくパブリックサービスを通して
付加価値を生む事を求められるようになるような気がします。

いつも、ありがとうございます
Posted by penguin-oyaji at 2008年12月11日 21:19
こんにちは。

初コメントになります。

一才の娘の子守しながら仕事してます(笑)。

PCでの仕事中に寄らせていただきました。

娘が寝たら、またゆっくり見させていただきます。

それでは失礼します。
Posted by ☆KEEP BLUE☆ at 2009年02月03日 12:32
☆KEEP BLUE☆さん、こんばんは。
そして、はじめまして。

数あるブログの中から見つけて下さって、ありがとうございました。

気が向いた時で良いので、これからもよろしくお願いします。
Posted by penguin-oyaji at 2009年02月03日 23:02
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