2013年11月09日

宅急便で日本を変えた男の物語【「経営学」小倉昌男】

小倉昌男 経営学 

「経営学」

小倉昌男:著

日経BP社

今更ながら・・・名著「経営学」を読みました。

あまりに有名な本ですから既にご存知の方も多いと思いますが、クロネコヤマトの宅急便を創り上げたヤマト運輸の元社長・小倉昌男氏がその立ち上げから成功までの苦闘を赤裸々に語った一冊です。

Mac、iPod、iPhoneによって世界中の人々の生活を変えたのがスティーブ・ジョブズでなら、宅急便によって日本人の生活を変えたのが著者、小倉昌男氏だと思うんですね。

今、当たり前のようにある宅急便という生活インフラ、それがどのように築かれてきたのか、その考え方、決断、行動力、周囲の反応、そういう経営の根幹の部分にまで言及されていてまるで上質のドキュメンタリー番組を見ているかのようにわくわく、ドキドキしながら読むことが出来ました。

Amazonの内容紹介

「儲からない」といわれた個人宅配の市場を切り開き、「宅急便」によって人々の生活の常識を変えた男、小倉昌男。

本書は、ヤマト運輸の元社長である小倉が書き下ろした、経営のケーススタディーである。

   全体を通して読み取れるのは、「学習する経営者」小倉の謙虚さと、そこからは想像もできないほど強い決断力である。成功した人物にありがちな自慢話ではない。

何から発想のヒントを得たか、誰からもらったアイデアか、などがこと細かに記されている。講演会やセミナー、書籍、マンハッタンで見た光景、海外の業者に聞いた話、クロネコマークの由来…。

豊富なエピソードから伝わってくるのは、まさに学習し続ける男の偉大さである。

■経営とは論理の積み重ねである 

経営とは自分の頭で考えるもの、その考えるという姿勢が大切であるということだった。 

経営とは論理の積み重ねである。

(中略)

なぜ他社が成功したのか、自社の経営に生かすにはどこを変えるか、論理的に考える必要がある。考える力がなければ経営者とはいえない。

当時、運輸業会の誰もが「儲からない」と思い込んでいた個人宅配市場に着眼し、どのようにしたら儲けが出て事業として成り立つのか?

この命題に対して、論理を積み重ねて「解」を導き出す様子を読んでいて、私は思わず「なるほどなぁ〜」と感嘆してしまいました。

『論理的思考(ロジカルシンキング)』という言葉は知っていましたが、なるほど!ビジネスの現場でこうやって使うものなんだ!と目からウロコがボロボロと剥がれ落ちたような思いです。

(知っているコトと、使いこなせるというコトは違うんですよね)

それから・・・

全国ネットワークを構築するにあたり、どれだけの物流拠点(センター)を作れば良いのか?その答えを導くにあたり全国の郵便局や公立中学校、警察署の数を調べて検討するシーンが書かれているのですが、これなんて仮説思考とかフェルミ推定のケーススタディだと思うんですよね。

『経営とは自分の頭で考えるもの』

儲からないと思われていた宅急便が成功したのを見ると、同業他社がそれこそ雨後の筍のように個人宅配市場に参入してきたそうだが、所詮、猿真似はサルマネである。

自分自身も、ともすると成功事例を丸パクリすることがなきにしもあらずだが、自分の頭で考えるコトの大切さと、考えるとはどう云うコトなのかということをこの本で改めて教えられた思いがしました。

もっとも・・・

最初にこの宅急便の事業化を役員会に諮った時には全員から反対されたそうだが、その反対を押し切って納得させるだけの胆力や行動力がなければ、いくら良いことを考えても、絵餅になってしまうと思うだが。

■社長の仕事

「サービスが先、利益は後」という言葉を、社長が言わずに課長が言うと、そこの社長に、「お前は利益はなくても構わないと言うのか」とこっぴどく叱られるおそれがある。

「サービスが先、利益は後」というのは、社長だから言える言葉である。だからこそ、逆に社長が言わなければならない言葉なのある。

今は昔。

私が当時、勤めていた会社が経営危機に陥り役員でもあった私もご多分に漏れず、いくつもの新規事業を検討したりしていたことがあります。

でも・・・そう簡単にウハウハ儲かるビジネスなんてそうは無いですよね。。

初期投資を回収して利益が出るようになるまでは、数年は掛かるものばかり。

そんな時に、「最初は利益が出ませんが、こういうサービスを提供すれば必ず利益が出るようになる筈です!」なんて、そう簡単には言えないし、「それじゃ、利益が出るまでどれくらい掛かるんだ?」と聞かれて「はい。。恐らく3から5年くらい・・・」などと言おうものなら「何を暢気なコトを!」と一蹴されておしまいです。

小倉氏が宅急便の事業化を役員会に諮った当時、ヤマト運輸も商業貨物の市場で他社に破れ、経営的にジリ貧に陥っていたそうです。

そんな危機的な状態の時に「利益は後」と言えるのはやはり社長だけだと思うんですよね。。

経営者・・・と言うよりは、社長だからこそ言える、

社長だからこそ決断できる

そういう仕事があると思うんですよ。

よく経営者、社長は孤独だ、と言われることがありますよね。

「サービスが先、利益は後」

この言葉、一介の社員が言うのと、社長が言うのとではやはり重みが違うんですよ。

この本を読みながら、社長だからこそ出来る、しなければならない仕事があることを再認識するとともに、稀代の名経営者、小倉昌男氏と言えども一人の人間としてやはり孤独と闘っていたのだろうか・・・?

そんなことを思ったりもしました。

■「ありがとう」のプレゼント 

当初は文句を言っていたヤマト運輸の古株社員ドライバーたちも、宅急便の配達に行って、お客様からありがとうとお礼を言われるようになってから、様子が変わった。

商業貨物を運んでいた彼らは、それまで貨物を配達に行ってお礼など言われた経験がなかった。

そのため、びっくりするとともに感激してしまった。そして段々やる気が起ってきたのである。

宅急便サービスを始めるにあたり、ヤマト運輸ではそれまでトラックの運転手をしていた社員たちに、これからは「サービスドライバー(SD)」として運転だけではなく集金や伝票書き、コンピューターへの入力、問い合せへの対応など一人で何役もやって欲しいと行ったところ、「俺たちは運転手だ。そんなこと出来ない!」と拒否されたそうです。

でも、そんなドライバーたちもお客さまから言われる「ありがとう」の言葉に心が動き、積極的にセールスドライバーとしての仕事をするようになったのだとか。

このお客さまからの「ありがとう」の話しは本書の中でも何度か繰り返し書かれているのですが、それを読む度に私、不覚にも(?)ジーンと熱いものを感じてしまいました。

よく「何のために働くの?」ということが言われますが、仕事って基本的には自分以外の誰かのお役に立つためのものだ、というのが私の考えです。

でも、日常の仕事の中で誰かの役に立っているというコトを感じにくい仕事があるのも事実。

でも、そのような仕事であっても「ありがとう」というたった一言が自分の仕事の意味を教えてくれたりするんですよね。

「ありがとうで返事をしよう」と言ったのは我が師匠、和田裕美さんですが、その「ありがとう」のプレゼントの意味を改めて本書を読みながら再確認できたように思います。

■最後に■

この本の冒頭。宅急便を始める前からヤマト運輸が永年、取引をしていた三越百貨店との取引から撤退(契約解消)するシーンが書かれています。

なぜ永年取引をしていた三越百貨店との取引を停止したのか・・・?!

えっ、そんなことまで書いちゃっていいの?と思うくらいに赤裸々な事実が書かれていて、小倉昌男氏の生々しい感情と悔しさみたいなものが滲み出ているのには、驚きました。

ビジネス書でありながら、理論や経営問題だけでなく生身の人間としての感情までもが綴られているところにもこの本の面白さがあると思います。

「名作とは再読に耐えうるものだ」と言った人がいますが、この本は読み返してみたら、きっとまた新たな発見があるんだろうな、と思うくらいに宅急便という一つのビジネス、引いては小倉昌男氏という一人の人としての生き様を描いた名作だと思うのです。

なぜ、もっと早くにこの本を手にしなかったのか?!

個人的には、そんな後悔の念も感じながら読了しました。

もしも・・・!まだ読んでないという人は直ぐに本屋さんへGO!なのだ。

posted by penguin-oyaji at 16:05 | Comment(0) | ビジネス書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする